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見たことも聞いたこともない言葉の奔流に、ほとんど船酔いのような眩暈を覚えて、くらくらしてしまったのでした。空には人工の月が浮かび、雨期には脂雨に覆われる、今自分のいるこの世界と似た器に全く異質なモノやコトを詰め込んで出来上がったような街が舞台の短編集です。

最初こそ、異形なる場所にぽいと放り込まれてしまったようで戸惑いと違和感を覚えるのですが、そんな感覚はすぐに忘れてしまいました。この、隅々まで作り物めいた―というか、細部まで作り込まれた世界にいつしかすっかり馴染んでしまって、どこかにあるかもしれない別の日常を垣間見ているような気がしてきます。知っているはずのない映像が、文章に想起されて脳内に浮かんでくるような錯覚すら抱くほど。これは、特異な読書体験でした。

不思議な単語は山ほど登場するのですが、中でも蒸し蕎麦の印象は強烈。玉桃の甘だし汁につけて食べる三色絡み合った蕎麦、という描写で、すっかりこの世界に染め上げられた感があります。言葉の響きも独特で、「つがね」だとか「滑騙(ぬめりだまし)」だとか「捻転如雨露(ねんてんじょうろ)」だとか、一体どうすればこんな名称が生み出せるんだ、と唸ることしきりでした。

しかし、この濃密な舞台装置がこの一冊だけで終わってしまうのは、なんとも勿体ないように思います。できれば、またどこかでこの場所に連れていってもらいたい、とそんな気分になりました。
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2010.07.29 Thu l SF(日本) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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