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「山あいの、村がひとまわり大きくなった程度の」、あるいは雪質の良いスキー場を有していはいるものの基本的には「深い雪に閉ざされた」と描写される小さな町・雪沼を舞台にした連作短編集です。

登場する人たちを、「実山さん」「絹代さん」という風に丁寧に呼ぶ視線がなんとも優しく温かいです。ボーリング場のレーンにピンが転がる音に鳥肌が立つ思いをし、氷砂糖に哀しい思い出を重ねて涙ぐみ、亡くした息子を思いまた涙を浮かべ……という風に、こちらの視点も呼吸も、彼らの感情にごくすんなりと寄り添ってしまうようでした。

もちろん彼らは架空の人物たちではあるのだけれど、ひとりひとりがそれぞれ今に繋がる過去を―時にそれは胸を突かれるくらいに鮮烈な痛みを伴っていたりもする過去を―持っていて、まるで生身の人たちと向き合っているような感覚を味わいました。そして、そんな彼らが生きる「今」は、地に足の付いた誠実な毎日。読み終える頃にこれほど穏やかに充たされる短編集は、そうそうないように思います。

ストーリーそのものは派手でも華やかでもないのだけれど、文章は隅々まで美しい表現に溢れています。例えば、冒頭の一遍「スタンス・ドット」に出てくる一文。「買い物かごを振りながら歩いてくる途中でキャベツでも落としたみたいに緑色のボールを投げた」。この部分を読んだ途端、私の心は鷲掴みにされたのでした。
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2008.10.26 Sun l 日本小説(未分類) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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