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小惑星の衝突により8年後に地球が滅亡すると予告されてから5年後、一応の平穏を取り戻したように見える世界が舞台連作短編集です。

読んでいる間中、これはフィクションだというのに、本当に3年後には世界が終末を迎えるような気が、ずっとしていました。例えるならばそれは、前世紀末に「もうすぐ世界は終わるのかもしれない」と思っていたあの夏を思い出すような感覚。かけがえのないものの重みには無くしてから気付くものだ、とは良く言われるけれど、「いずれ失われていくものだ」と認識するだけでも、周囲の景色は違って見えるもの。あらゆるものが永遠ではないということに、儚さというよりも愛しさを、自分を取り巻くすべてのものを両手を広げて抱きしめたいような愛しさを感じた、あの夏と同じような感慨でした。

絶望するほかないような状況、目を背けたくなるほど容赦ない事実を、オブラートにくるむわけでもなく直視しつつも、どうしてこんなに軽やかなんでしょうか。残酷なの優しく、乾いているのに温かい。主人公たちが置かれた現実を想像すれば、恐ろしさに足が竦みそうになるほどなのに、その絶望の中に置き去りにされた感はありません。こんな状況でも、ひとは誰かの幸せを願うことができるし、愛することも、そして許すこともできる。笑うことも、温かな涙を流すこともできる。どんなに些細であっても、「希望」というものは強靭で強かなものなのだ、と思ったのでした。

他の作品と比べると、綿密に張り他の作品のように、巡らされた伏線の巧妙さや、目を見張るように鮮やかな展開に唸る、という華やかさはないのだけれど、じんわりと良い、です。中でも、登場人物たちの会話が良い。これは、この人にしか書けない話だな、と思います。

「演劇のオール」(の語り手の女の子)が一番、次点で「深海のポール」(に出てくる主人公のお父さん)が好きした。
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2010.06.10 Thu l 日本小説(未分類) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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