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和洋折衷様式の邸宅に、季節ごととりどりな花や実を実らせる五百坪余りの庭を持ち、関東大震災も、あの戦争も潜り抜けた後、結局は時代の流れに取り残されて解体され、「断末魔の叫びを上げ」つつ死んでいった「家」と、そこに暮らした住人たちの物語です。

語り部を務めるのは、祖母ミヤと、彼女が「家の後継者」と密かに思い定めていた孫娘ヨシノ。「家」への執着心にしても、個人的な性格にしても、まるで共通するところがないように見えるふたりの女性たちですが、けれども芯にある冷淡さのようなものや、それでいて夢想的なところは(本人が否定しようとも)確かにどこか共通しているようにも思えました。しかし、劇的な最期といい、埃になってもまだ「家」に取り付き、物語の結末を見届けようとする姿といい、やはり祖母は只者ではありません。「私は女であることを悔やんだ」の一文には、ぞくりとさせられました。

傍にあるからこそ上面の価値だけに惑わされる、遠くにあるからこそ冷静な目で真価を捉える……そして、知らず縛られている、囚われている、そんな感慨も抱きます。全てが明らかになった謎など、安堵感とともにすぐ忘れ去られてしまう、本当に残っていくのは謎のままの謎だ、とも。「ロマンス」という言葉が漂わせるのは、単なる甘やかさだけではありません。

どんな悲劇も骨肉の争いも、例え激情を迸らせようとも、どこか冷ややかな風情を失わない文体が美しい、と思います。
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2009.08.26 Wed l ファンタジー(日本) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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