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読み終えるまでにはとても時間を要したのです。翻訳の文体が合わなかった、ということなのかもしれませんが、膨大な直喩と隠喩、独特な句読点に四苦八苦、結局最後まで上手く馴染むことができませんでした。

主人公は、仕事の関係でフランスから単身ブレストンという街にやって来た青年です。物語は、彼の目に映ったブレストンという街の陰鬱な姿を克明に、そして執拗に描き出します。
思うのは、これは一人称という語りの特徴が、良くも悪くも強烈に出ている作品である、ということ。言い方を換えれば、これは一人称でしか書けなかったであろう物語ではないか、とも思います。複雑な愛情を内に秘めた主人公の目を通した語りによって、舞台であるブレンストンという「街」が、狡猾で冷酷な意思を持った巨大な「生物」のように思えてくるのです。全編を通して、濃く垂れ込めた灰色雲の気配を、例えそれが晴れた日の出来事を綴る文章であってさえも、鈍く重く圧し掛かる曇り空の気配を、感じ続けました。

しかし、私にとってこの本が非常に読み辛かった元凶も、この主人公の語りにありました。一人称であるにも関わらず、最後まで主人公を信用し切れなかった、というところに、敗因があるようなのです。身も蓋もない言い方をしてしまえば、それほど重要ではない出来事をことさら深刻に受け止め、自身の見出した意味付けにのみ執着する、そんな印象を拭い去れなかったのでした。あるいは、主人公の懸念や不安、そして疑惑は全て正しかったのかもしれない、と仮定してみることもできるのですが、それはそれで余計に暗鬱とした気分になり、なんとも居心地の悪い読後感が残るばかり。ただ唯一、語り手が全ての希望を託した存在を失う場面にだけは、生々しい痛みを感じ、また深く同情もしました。

最後に、本筋とはあまり関係のないところで発見したことを少し。初めは意味を成さない線と点の集積にしか見えなかった挿絵が、多少はこの小説世界に慣れてくるにつれ、何が描かれているのかおおよそ見えるようになってきた(ように思える)のは、なんとも不思議でした。そしてもうひとつ面白かったことはといえば、作中の日付・曜日が今年(2008年)と同じであったこと、でした。
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2008.08.18 Mon l 海外小説(未分類) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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