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第二次世界大戦下のキスカ島に取り残された四頭の軍用犬から始まる、「戦争の世紀・20世紀」を縦横無尽に駆け巡る犬たちの一大叙事詩。

これまで出会ったことのないような畳み掛ける文体とストーリー、まったくもって挑戦的な、そして挑発的な小説だと思います。確かに面白かったのだけれど、自分が一体なにをもって「面白い」と感じたのかは確信が持てずにいる、というのが正直なところです。荒々しく、血生臭く、容赦なく、そのものが一頭の獣のような暴力的なまでの生命感と躍動感に否応無く引きずられて、気付けば最後のページまで辿り着いていた、という感があります。読み終えた、というよりも、駆け抜けた、といった風。そんな最中でひとつ思ったのは、この高揚感を下手に分析しようとするのではなく、犬たちとともに荒野を疾駆し、はるか宇宙を見上げ、敵を粉砕し、吠える、その疾走感に身を任せれば良いのだ、ということでした。

登場人物たちのドラマは、それぞれに十分すぎるくらい劇的なのに、一旦犬たちの物語にスポットライトが当たるやいなや、人間たちのストーリーなどすっと背景に遠ざかってしまうような気がしました。それほどまでに犬たちの運命は凄絶です。
そう、あくまでも主役は犬たち。様々に関わり現れては消える人間たちは、彼らに知恵や技術や授け、そして子孫を残すために手を貸した脇役、激動する時代すら彼らにとっては重要ではない、そんな気がしてきます。だって、それは人間の歴史だから。犬たちの力強い生命の系譜は、人間たちの歴史などに頓着しないのです。

これほどのストーリーが轟音を立てて突き進んだ末に辿り着く場所には、どれほど驚天動地の結末が待っているのか、と思っていたら、拍子抜けするほど静かに終わってしまったのですが、しばし呆気に取られた後にふと、物語は終わる、けれども歴史は終わらない……という感慨が頭に浮かんだのでした。

この方の作品はは二冊目です。一冊目に読んだ「gift」を思い返すと、あまりの印象の違いに驚きました。けれども、あの色とりどりの掌編集のどこかに、これに繋がる糸があったのかもしれない、とも思います。また別の作品には全く違う顔があるのかも、と思うと次々に読んで確かめてみたくなります。
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2008.06.30 Mon l 日本小説(未分類) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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