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「激場」とタイトルにつく割には、案外と非カラフルな日常……などと、初めの内は失礼なことを思っていました。申し訳ない。

自分の中に、確固たる「好き」を持っている(それは、何も恋愛に限ったことではなく)ひとの人生には強度がある、のだと思います。楽しいことを、外部から与えてもらうのを待たずとも、自作自演的に(と言うと語弊があるかもしれませんが)生み出せるひとは、きっと「退屈」とか「なんとなく不幸」とか、そういったもやもやを抱えずにいられる、もしくは抱えても案外するりと抜け出すことができる、そんな気がしました。

登場するご友人たちが、またそろいもそろって素敵なキャラクターなのも、ご本人のお人柄が引き寄せた結果なのでしょうか。みなさん、「自分だけの楽しい人生」を送っていそうというか……。なにはともあれ、人生の幸せも楽しみも、自前のアンテナでたぐり寄せて、味わい尽くすしかないのだ、と感じたのでした。
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2018.02.10 Sat l エッセイ(日本) l コメント (0) トラックバック (0) l top
時は1942年、ドイツ軍に包囲されたレニングラードで、落下してきたドイツ兵のナイフを盗んだために捕らえられることになった主人公レフ。処罰を免れることと引き換えに、彼が青年兵コーリャと共に命じられたのは、間近に迫った大佐の娘の結婚式に必要な卵を1ダース見つけ出すこと……。

「卵を探す」道行はつまり、彼らがいかにしてふたりとも無事にこの戦争を生き延びていくのか、生き延びることができるのか、という過酷な冒険譚でもあるわけで、飢餓と寒さに苦しめられつつも、次々に襲い来る困難を、機転とユーモアで切りぬけていく展開は、もうはらはらさせられ通しでした。いつ命の危機に晒されるか分からない、無謀とも言える旅なのに、悲壮感は不思議とあまり感じないのは、きわどいジョークを連発しつつ、次第に打ち解けあっていく主人公たちの遣り取りのおかげでしょうか。

戦時下の街の惨状は生々しく、時には目を逸らしたくなるほどの人間の残酷さも描かれています。でも、そんな中でも、友情は育まれるし、魅力的な異性に出会えば恋心が芽生えることもある。戦争という巨大の暴力の最中にあっても、例え自分の命さえ危ぶまれるような状況下であっても、人は誰かを気遣ったり愛したりすることができる。そんな当たり前のことに、若い命のしなやかなたくましさを感じました。

そして、何とも印象的なのが、ラストシーン。レフを訪ねてきた「彼女」の一言が、「全く料理をしない祖母」という冒頭のさりげない表現と繋がった時には「あ……!」と呟いてしまいました。
2014.05.02 Fri l 海外小説(未分類) l コメント (0) トラックバック (0) l top
今の時点の私には、対話の内容が難解で理解できていない部分も、恐らく多々あります。例えば五年後、あるいは十年後、読み返した時に今よりどれほど深く読めるようになっているか、そのためにどれだけ知識や物の考え方を磨くことができるのか。そんな読み方のできる本のような気がします。

片や数学者、片や文学者、と分野は違えど共に「知の巨人」であるふたりの会話は、縦横無尽にテーマを変えて広がっていきます。共鳴が共鳴を呼び、絶妙なハーモニーを奏でていくような、互いに親和性の高い遣り取りは、例え十分に読み解けていないにしても、自分の脳の未だ使われていない領域が覚醒していくような、そんな刺激があります。

数学的理論は「知的」かつ「感情的」に矛盾しないことが必要であるとか、生後八カ月くらいの赤ちゃんに鈴を振って聞かせると二回目には何かを思い出そうとするような目の表情を見せる、といった話題が印象的でした。

それにしても。人類が(知力的に)滅亡せずにいられる時代はあと二百年くらい、と今から約五十年前に語られている、ということは、残り時間は百五十年ということか……。
2014.01.10 Fri l 思想・宗教 l コメント (0) トラックバック (0) l top
現実の中に非現実がごく平然とした顔で紛れ込み、いつの間にか非現実が現実を吞み込んでしまうような、あるいは、登場人物たちが退場した後、今まですぐそこにあった異世界への扉がぱたんと目の前で突然に閉ざされてしまってぽかんとするような感覚、とでも言えばいいのでしょうか。このトリップ感は、なかなか強力です。なかなか戻っては来られません。

表題作の「黄金の壺」は、絢爛豪華な奇想がこれでもかと披露され、主人公アンゼルムスと共に、“ありえない”はずの御伽噺を、気付けば信じて受け入れてしまいそうになる語りが魅力的です。「マドモアゼル・ド・スキュデリ」は、打って変わってミステリの趣。スキュデリの知性をウィット、そして時には茶目っけも交えた受け答えが、なんともエレガントです。忘れ難いのは「クライスレリアーナ」。誰が誰に語りかけているのかが、途中からねじれるように曖昧になってしまって、奇妙な後味が残ります。
2013.12.13 Fri l ファンタジー(海外) l コメント (0) トラックバック (0) l top
全ての真相が明かされた時、あまりのことにページを開いたまま凍りついてしまいました。この決着の付け方、鮮烈極まりないです。ここ近年に出会ったミステリの中では、一番衝撃的なラストでした。これは、すごい……。
若き日の感傷と挫折に謎をひと垂らし、といった風な物語かと思っていたら、見事に足元を掬われました。そんな、生易しいものでは、まるでありませんでした。

真実を知った上で振り返ると、甘美な(だからこそ時に痛々しくもある)青春時代の思い出のそこかしこに、何故か漂う微妙な違和感の正体、それはこれだったのか、と腑に落ちた気がしました。どこか夢の中の出来事のようで、それは過去とは良くも悪くもフィルターがかけられ美化されるものだからか、とも首を捻りつつ思っていたのだけれど、ああそういうことだったのか、と……。
内容に触れてしまうと、これから読む方の楽しみを半減させてしまうので何も言えないのですが、読み終えた後でじっくタイトルを眺め直すと、またじわじわと余韻が広がります。この物語にはこのタイトルでしかありえなかったのではないか、と些か熱っぽく思ってしまうほど。

これは、「音楽」と「己」を巡る、美しくも残酷な物語。主人公の心の内に思いを馳せると、底知れぬ深みを覗き込んでしまったような、恐怖にも陶酔にも似た想いに囚われます。
2013.11.18 Mon l ミステリ(日本) l コメント (0) トラックバック (0) l top
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